【短】俺の彼女泣かせたやつを八つ裂きにしようと思ってたら、なんと俺だった件。
「まだ…11時だよ…?それに、今日は会わないって……」
「これっ、このみちゃんが好きだって前に言ってたでしょ…!」
「……これ」
「そう!数量限定だったけど何とかゲットできてさ、よかったほんと…!」
それは私がずっと気になっていた隣町にあるチョコレート専門店の、ちょっとだけ値段も高いチョコレートケーキだった。
かなり人気のお店らしく、開店して30分以内に売り切れてしまうんだと。
だから「いつか生きているうちには食べてみたいなあ…」くらいの気持ちだったというのに。
「とりあえずこれ、チョコだから溶けちゃうんだ。家のなか……入っていい?」
「………うん」
「お邪魔しますもう何がなんでも出ません」
ドアを閉めてガチャリと、鍵をかけたのは結多くんだった。
専門店のブランドロゴが入った紙袋を受け取った私は、複雑な気持ちを抱えたままリビングへ案内する。
まずはケーキが溶けちゃわないように冷蔵庫に入れて、そのあとはどうしようかと立ち往生していると。