【短】俺の彼女泣かせたやつを八つ裂きにしようと思ってたら、なんと俺だった件。
「…こーのみ、ちゃん」
と、名前を呼ばれる。
ふと目を向けてみると、ソファーに案内したはずの彼はフローリングに正座していて。
ガサゴソとリュックから何かを取り出したかと思えば……それを私に真剣な顔で差し出してきた。
「……え?」
「お分かりのとおり、どの角度から見てもバリカンです」
「……わざわざ買ってきたの…?」
「おうよ」
充電をしてスイッチを押すだけでお坊さんになれてしまう機械。
無理やりにでも手に持たせられてしまうと、逆に緊張から震える。
「…これ…を…、どうするの…?」
「俺の髪に当ててください。そして剃るのです。何ミリ?2ミリでいく?いや長すぎるわ、0.5でいい」
「え、え…」
「…俺のこと、嫌いになっちゃったんでしょ?それは嫌われた俺が悪いんです、清めます心をすべてを。なのでまずは頭から」
本気で彼は言っているらしい。
ううん、いつだって彼は本気なんだ。
私と向き合ってくれるときは。
いつも私との特別なことがあるときは必ずヘアワックスで髪を作って、デートの日は服装にも気を配っている結多くん。