【短】俺の彼女泣かせたやつを八つ裂きにしようと思ってたら、なんと俺だった件。
そんな彼が、今は無造作に流れるままのヘアスタイル、服装もラフなトレーナーと動きやすそうなカーゴパンツ。
きっと私に電話を切られてから、隣町まで走ってケーキを買いに行ってくれたんだろう。
「っ…」
「このみちゃん?」
「……ちがう…、結多くんが嫌いとかじゃ、ない…」
バリカンを床に置いて言うと、結多くんは全身から脱力するように足を崩した。
そしてすぐさまガバッと顔を上げて、迫ってくる。
「まっっっじで!!?!?!」
「ひゃ…!」
「あっ、ごめん可愛い、いやちげえ、ごめん驚かせて!!なにっ、じゃあなんだあれ!なにがあったのこのみちゃん!!
俺ほんと心当たり無さすぎてドッペルゲンガーでも動きやがったんじゃねえかなって思ったわ!!!」
心当たりが、なさすぎる───。
そんな些細な言葉にズドンと落ち込む私。
たぶん、きっと、これくらい些細なこと。
あれも本当に些細なことで、そんなことで?なんて思われてしまうかもしれない。