【短】俺の彼女泣かせたやつを八つ裂きにしようと思ってたら、なんと俺だった件。
結多くん、ほんとうに分かってないの…?
あんなに楽しそうに話しながら歩いてたよね……?
「ま、まえに…、女の子と……駅前、歩いてた…っ」
「……へ?」
「結多くんっ、茶色の髪の女性と…歩いてた……っ」
「………」
やっと心当たりがあったから黙ったのだろう。
認めていいよ。
あの子が本当の彼女なんでしょう……?
私とあの人だったら、選ぶのはどちらかなんて、誰だとしても答えは分かっている。
「それって、駅前のスーパー?」
「…うん」
「そのとき俺と歩いてたひと…俺のこと、“ユイ”って呼んでた?」
「っ、……うん」
呼んでいた。
私ですら呼んだことがないあだ名で。
そんな結多くんも当たり前のように返事をしていて、すごく胸が苦しかった。
「っ、」
ふわり、と。
さっきは引っ込めてしまった手が、なぜか頬に触れて涙をすくってくれる。
「や、結多くんやめて…っ」
「うん。やーめない」
ぷいっと逸らそうとしても、それ以上の力が押さえてくる。
私を見つめる眼差しが熱く深くなっていって、最終的にはそのまま涙に口づけるように唇が落ちてきた。