【短】俺の彼女泣かせたやつを八つ裂きにしようと思ってたら、なんと俺だった件。
「あっ、もしもし姉ちゃん?ちょっと例のヴィーナスに代わるけど、優しくしねえとガチで訴えるから」
はいこのみちゃん───と、渡された結多くんのスマートフォン。
そんな急に渡されても……っ!
私だってまだ心の準備が整っていないし、泣いたあとだから声だってガラガラ。
『もしもーし、あれ…?このみちゃーん?』
戸惑っている私を感じ取ったのか、お姉さんの声が画面の先から聞こえてくる。
一人っ子の私にはすべてが新鮮だった。
「もっ、もしもし…」
『やっだヴィーナスっ!!声だけで分かる、この子はいい子だわ……。ユイから話は聞いてるよ~!』
「へっ、あ、ど、どうも……初めまして…」
『かわいいーーっ!!今度はあたしが居るときに遊びにおいで?一緒にランチでも食べようね!』
「はっ、はい…、あ、ありがとう…ございます…」
あのとき結多くんと話していた女の子とまったく同じ声。
ここでこのみ、自分がどれだけ恥ずかしい勘違いをしていたのかと、思い知る。
「……もう俺と会ってくれない?悲しみの結多だぜそれは」