シンデレラは王子様と離婚することになりました。
それでも心が苦しいと叫んでいる。
(大翔……)
呼んだって来てくれるはずがない。だって私は、大翔を傷つけた。突然いなくなって、離婚届だけ置いてきて。きっと、私は恨まれている。
もう大翔は、私を愛してくれないだろう。
「捺美、なにをしている」
突然後ろから声をかけられたので、驚いて振り向くと、そこにはお父さんがいた。
黒縁眼鏡に、所々白髪が混じった短い髪の毛。痩せていて、いつも疲れきったように猫背になっている。
昔はもっと覇気があったし、筋肉質でよく笑っていた。お母さんが死んでから、まるで人が変わってしまったように見える。
「別に、なんでもないよ。それより、お父さんの体調はどうなの?」
慌てて頬に流れていた涙を拭って、作り笑顔を浮かべる。
お父さんは、私がいなくなった後、全ての家事をやらなければいけなくなり、体調を崩していた。
継娘がランチ後の私を見つけて駆け寄ってきたとき、
『お父さんが倒れた。あんたのせいよ』
と耳元で言われた。
心配な気持ちは当然あったけれど、だからといって実家に戻ろうと決断することはできなかった。
実家から出ることが、私の最大の目標だった。それに、大翔という夫の存在もある。
でも、私には関係ないと割り切ることもまた、できなかった。
継娘の言葉は、いつまでも私の頭に残り続けた。仕事をしているときも、大翔と一緒にいるときも、いつも頭の中で継娘の嫌味な声が反復していた。
継娘の言葉に負けて、引っ張られ、実家に戻ることは物事の解決にはならないと自分に言い聞かせていた。冷静に考えろと何度も自分を奮い立たせた。
執拗なまでに追いかけて来る継娘の魂胆も腹が立ったし、ここで実家に戻ったら彼女たちの思うつぼだ。……そう思っていたのに。
数日後、お父さんが突然私の前に現われた。
会社終わり、タクシーを待つ私に声を掛けてきた。
『捺美』
『お父さん……。倒れたって聞いたけど、大丈夫なの?』
『倒れてはいない。ただ、少し体調が悪いだけだ』
そうは言ってもお父さんの顔は青白く、前より痩せてしまったように見えた。
(大翔……)
呼んだって来てくれるはずがない。だって私は、大翔を傷つけた。突然いなくなって、離婚届だけ置いてきて。きっと、私は恨まれている。
もう大翔は、私を愛してくれないだろう。
「捺美、なにをしている」
突然後ろから声をかけられたので、驚いて振り向くと、そこにはお父さんがいた。
黒縁眼鏡に、所々白髪が混じった短い髪の毛。痩せていて、いつも疲れきったように猫背になっている。
昔はもっと覇気があったし、筋肉質でよく笑っていた。お母さんが死んでから、まるで人が変わってしまったように見える。
「別に、なんでもないよ。それより、お父さんの体調はどうなの?」
慌てて頬に流れていた涙を拭って、作り笑顔を浮かべる。
お父さんは、私がいなくなった後、全ての家事をやらなければいけなくなり、体調を崩していた。
継娘がランチ後の私を見つけて駆け寄ってきたとき、
『お父さんが倒れた。あんたのせいよ』
と耳元で言われた。
心配な気持ちは当然あったけれど、だからといって実家に戻ろうと決断することはできなかった。
実家から出ることが、私の最大の目標だった。それに、大翔という夫の存在もある。
でも、私には関係ないと割り切ることもまた、できなかった。
継娘の言葉は、いつまでも私の頭に残り続けた。仕事をしているときも、大翔と一緒にいるときも、いつも頭の中で継娘の嫌味な声が反復していた。
継娘の言葉に負けて、引っ張られ、実家に戻ることは物事の解決にはならないと自分に言い聞かせていた。冷静に考えろと何度も自分を奮い立たせた。
執拗なまでに追いかけて来る継娘の魂胆も腹が立ったし、ここで実家に戻ったら彼女たちの思うつぼだ。……そう思っていたのに。
数日後、お父さんが突然私の前に現われた。
会社終わり、タクシーを待つ私に声を掛けてきた。
『捺美』
『お父さん……。倒れたって聞いたけど、大丈夫なの?』
『倒れてはいない。ただ、少し体調が悪いだけだ』
そうは言ってもお父さんの顔は青白く、前より痩せてしまったように見えた。