シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「ネットスーパーを利用しているそうです。家の中の様子は見えにくく、宅配業者は食材の入った段ボール箱を玄関の中にまで入れてあげているそうなので、捺美さんの姿を確認することはできていないそうです」

「そうか、捺美は一体、いつまで家の中に引きこもるつもりだ……」

「家族が出したがっていないのかもしれませんよ。ようやく引き戻したのですから」

「本当に胸糞悪い」

 今すぐ実家に行って、捺美を救い出したい。でも、捺美が拒否する可能性も高い。どうすれば……。

「あ、ちょっと待ってください。捺美さんの実家を張っていた探偵から電話が……」

「すぐ出ろ!」

「はい、え……捺美さんが?」

 固唾を飲んで、探偵と電話で話している高城を見つめる。捺美が、どうした?
 嫌な予感がして、胸がざわつく。
 電話を切った高城が困惑した表情を浮かべながら報告する。

「捺美さんが一人で家から出てきたそうです。どこに向かっているのかはわからず、とにかく追いかけるとのことです」

「捺美!」

 気が付いたら身体が勝手に動いていた。財布と携帯だけ持って、社長室から飛び出る。

「社長、捺美さんがどこに行くかわかるのですか⁉」

「わからんっ!」

 高城が呆れかえっているのが背中越しに伝わってきた。
 なんだか嫌な予感がする。じっとなんてしていられなかった。 

 


< 107 / 124 >

この作品をシェア

pagetop