シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「あ~、生きてて良かった」

 心底安堵したような声だったので、命拾いしたというのは本当の話なのだろう。それなのに怒ってしまって、申し訳ない気持ちが芽生える。

 契約結婚だというのに、なんだろう、この感情は。

 離婚前提で、形だけの結婚式なのに、どうして私たちは恋人のように抱き合っているのだろう。

「今日は、楽しもうな」

「……うん」

 理由はどうあれ、私たちの結婚式。社長の言う通り、余計なことは考えずに楽しもうと思った。

 そして、社長のおじい様も式に参加できて、無事にミッションクリア。

 社長の両親は亡くなってしまっているから式に参加できないのは仕方ないとして、私の父も不参加なのは異例だった。

 どうして不参加なのかというと、理由はシンプルで結婚を伝えていないから。

 突然家に帰ってこなくなった娘が、結婚式を挙げているなんて知ったら卒倒するだろう。しかも相手は大企業の御曹司。
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