シンデレラは王子様と離婚することになりました。

第八章 すれ違い三角関係勃発

「やっ、あ……大翔……」

 捺美の黒くて艶やかな長い髪がベッドの上で波打つ。

 長いまつ毛に縁取られた大きな瞳が潤み、物憂げに俺を見つめている。小さな顔の頬が赤く染まり、透き通るような白い肌は滑らかで弾力がある。

 手を絡め、唇を貪る。抑えきれない欲望をぶつけるように、捺美を強く抱いた――


「……って俺は、なんて夢を見ている!」

 誰もいない部屋で、一人ベッドから飛び起きた俺は声を上げた。

 ハッとして思わず自分の口を手で抑える。

(聞こえてないよな?)

 俺の部屋には誰もいないが、俺の家にはアイツがいる。さきほど夢に出てきた女性だ。

 欲求不満もここまでくると、いっそ清々しい。ベッドに誘うも、見事に断られたので、夢に出てきてしまったらしい。

 捺美への想いは日毎に増している。どんな女性とつき合ってもすぐに別れてしまっていた俺なのに、捺美への気持ちは本物だとわかる。

 別れた幾人もの元カノは、一緒にいるのが億劫で、我儘をきくのも面倒くさい。会うことを極力減らすために、仕事を理由に断り続け、それでも長く続かなかった。

 それが今や、一分一秒でも早く家に帰って捺美に会いたいし、一緒にいる時間が楽しくて仕方がない。さらに、どんな我儘でもきいてあげたいし、むしろ言われなくても率先して尽くす。
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