シンデレラは王子様と離婚することになりました。
もう二度と捺美と接触しないことに同意する書面にサインさせるためだ。しかし、『家族なのに会えないなんてそっちが法的におかしい』だの、『会うなというなら慰謝料よこせ』だのワーワーギャーギャー騒ぎ立てて、なかなかサインしない。
 金を払えば収まるなら、金で解決しようかと思ったが、それはなんか癪に障る。長年捺美を苦しめ続けてきた張本人だ。天罰を下そうと思った。
 こういうことにやたら頭が回るのは高城という男。彼女たちが捺美に接触することを阻止し、なおかつ天罰が下る方法はないかと一任したら、

『お任せください』

 と不気味に笑って、とんでもないやり口で彼女たちを一撃で仕留めた。
 元々継母は、鍼治療のかたわら怪しいスピリチュアルで患者を洗脳し、高額な物品を売っていたそうだ。それが問題となり、夜逃げのような形で引っ越すことになるのだが、それを徹底的に調べ上げ、かつ現在の仕事もなにやら怪しいことを親子でやっていたそうで、詐欺罪で入獄させた。
 借金があるので保釈金も払えず、親子揃って刑務所入り。掘れば掘るほど罪状が出てくるありさまなので、しばらくは出てこられないだろう。
 
 そして最も驚いたのが、佐伯だ。
 捺美と離れさせるために海外勤務を打診させたが、捺美に振られたので、これまで通り国内営業でいいかなと思っていたら、なんと、南米希望を出してきた。
 本人曰く、『今、一番大変なところで、修行したい』だそうだ。
 さすがに可哀想すぎるので、国内に残るように今度は逆に説得したのだが、本人はもう聞く耳を持たなかった。
『行かせてくれないなら辞める』
 とまで言い出したので、一年という条件付きで許可を出した。嫌になったらすぐに帰ってきていいよと言ってあるが、佐伯の性格上、一年しっかり勤め上げる気がする。
 ちなみに南米の支店長は大喜びだった。猫の手も借りたい状態に、これだけ優秀な人が派遣されるのだからそりゃ助かるだろう。
 復興しつつ利益を上げる。そんなこと普通ならできないが、佐伯ならやりそうな期待感がある。一皮も二皮も剥けて帰ってきてくれることを願っている。
 こうなると次に問題となるのは、捺美の上司だ。
 これまでは佐伯の営業事務として働いていたが、佐伯がいなくなる以上、誰の下に就かせるかが問題だ。
 佐伯の下で頑張ってくれていたので、今度は楽に仕事ができる人の下に就かせてあげたいと思っていたら、ちょうど桂木 昌の営業事務が辞めた。
 桂木といえば捺美と一緒にランチを食べた女だ。相性が良さそうだしいいのではないかと営業部長は勧めてきたが、お前の目は節穴か? と言いたい。
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