シンデレラは王子様と離婚することになりました。
と言って、自信満々な魅惑的な目で私を見つめ、横柄な態度で足を組みなおした。

(うっわ~、一番苦手なタイプ)

 たしかに社長は誰が見てもかっこいいし、優秀だし、おまけにお金持ちだ。
 だからといって全ての女性があなたのお嫁さんになりたいなんて思っているとしたら、それは盛大なる勘違いである。

(性格が無理だわ……)

 俺様系男子は一番苦手。自信満々で傲慢で人を見下した態度が鼻につく。

「社長、めちゃくちゃドン引きされているじゃないですか!」

 運転手さんは、なぜかとても嬉しそうだった。
 社長は、「あれ? こんなはずでは」と言いたげに少し戸惑っていて、運転手さんに茶化されて恥ずかしそうに、

「うるさい!」

 と怒鳴っていた。

「私、入社してまだ三年目ですし、今は結婚なんて考えられません。仕事を頑張りたいからです」

 だから残業代もつかないのに、夜にこっそり会社に侵入して仕事を片付けていたのだ。

「結婚しても仕事は辞めなくていい」

 はっきり断ったにも関わらず、社長はぐいぐい攻めてくる。

「だからそういうことじゃなくて、結婚する気はないって言っているじゃないですか」

 だんだん苛々してきて、相手が社長だというのに強めに言ってしまった。
 妙に強気だった社長から笑みが消えて、真面目な顔になった。
 雰囲気がガラリと変わり、仕事モードに入ったことがわかった。
 社長は腕組みをして、私を冷たい目で見つめる。

「じゃあ、離婚前提ならどうだ?」

「え?」

 離婚前提の結婚ってどういうこと?

「これは交渉だ。ビジネスのように互いの利益を考えて契約しよう。俺は昨日までに結婚相手を決めなければいけなかった。それは、祖父の死期が迫っているからだ。生きている間に結婚式を挙げてほしいと懇願されている。結婚してくれるならば、深夜に仕事をして俺から逃げたことは水に流そう」

「それを出してくるのは卑怯じゃないですか? 職権乱用です。それにそれくらいで結婚を決められるわけないじゃないですか」

「まて、話はこれからだ。お前の望みはなんだ? 俺に叶えられることなら全力を尽くそう」

「私の望み……?」
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