シンデレラは王子様と離婚することになりました。

第二章 いきなり社長と同棲生活

 港区にある超高級分譲地。
 都内に住んでいても足を踏み入れたことはない、場違い感漂う邸宅街。その一角に高級車は進んでいく。むしろ高級車でなければ浮いてしまいそうな場所だ。
 その中でもひときわ目立つ、大使館や歴史的建造物のような低層高級マンション。
 東京でありながら、豊かな緑に囲まれている。
 深夜だけれど、イルミネーションのように明かりがともっていて、美しく配された壁面と豪華な装飾により、華麗な存在感を放っていた。白い石造りのエントランスは植栽に囲まれていて、中ではコンシェルジュが待機していた。
 車のドアは開いているけれど、降りるのが憂鬱で座ったまま固まっていると、一足先に降りていた社長が覗き込んできた。

「おい、さっさと降りろ」

 うわ~、もう怖いよ、この人。
 私の旦那様になる麗しい社長の顔を睨みつけて、車から降りた。

「それではまた、いつもの時間にお迎えに上がります」

 若いイケメンの運転手さんが、深々とお辞儀した。
 社長は片手を挙げて運転手に挨拶をし、私の腰に手を回してエスコートするようにエントランスに入っていった。
 いやいやいや、なにこの状況。
 コンシェルジュさんに見せつけるかのように、「こいつ、俺の女だから」アピール。
 確かに、現状って、私は社長の……婚約者ってやつ?
 これから同棲することになっているから、顔は覚えてもらった方がいいのだけれど。
 やたら堂々としているし、もの凄い満足気なのなんで?
 ホテルのロビーのような豪華なエントランスを通り、エレベーターに乗ると、社長は最上階のボタンを押した。
 なんだか急に不安になってきた。密室のエレベーター内に二人きりだと、その緊張感が増す。
 大丈夫なのだろうか。ほぼ初対面みたいな相手と結婚。そして同棲。逃げるなら、今しかないかもしれない。

「最上階は数戸しかない特別なペントハウス仕様となっている。部屋数も多いから住むのに不自由はないと思う」

 さすがは社長。一人暮らしなのにペントハウスですか。

「へえ……凄いですね」
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