シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「これ、大翔が準備したの?」

「本当は全部自分で準備できたら良かったんだが、さすがに時間がなくてプロに頼んだ」

 プ、プロに……。なんの記念日でもないのに……。

「さ、お腹空いてるだろ、食べようぜ!」

 若干、引き気味で戸惑っている私に反して、ノリノリの大翔。

 椅子を引いてくれるなど、ジェントルマンだ。

 ワインで乾杯して、美味しい料理を食べて……。いや、なにこれ、なんの時間。

 食事も終盤に差し掛かった頃、あることが思い浮かんだ。

(これって、最後の晩餐?)

 その推測が思いついた途端、全て繋がったような気がした。

(そうか、そうだよね。私が、言ったんだもんね)

 大翔はなにも悪くない。私が言ったことを忠実に守ってくれているだけだ。

『また今度な』なんて言って流しておきながら、実はしっかりと考えていてくれたんだ。

 そして最後に、私のためにこんなご馳走まで用意してくれて。

 笑顔でさよならするために、一生懸命準備してくれた。

 本当にいい人。最後まで、ずっといい人。

感謝……だな。かん……しゃ……
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