シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「捺美?」

 大翔が心配そうに声をかけてきた。私が急に涙を零したから。

 なにやっているんだろ、私。大翔のことを思うなら、笑顔でいなくちゃいけないのに。

 『今までありがとう』って笑顔で……。

 大翔が立ち上がって、私の隣へと来た。

「どうした?」

 泣き止め、泣き止め! 泣くな、バカ!

 そう思っているのに、涙はどんどん溢れてきて、嗚咽まで零れる始末だ。

 大翔は困惑の表情を浮かべながらも、優しく私を抱きしめた。

(ああ、大好きだなあ。離れたくないなあ)

 思いが溢れて止まらない。

 好きになっちゃいけない人だったのに。

私ができることは、潔く離婚してあげること。

それが、大翔の幸せになる。
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