シンデレラは王子様と離婚することになりました。
その日の夜、捺美は俺を拒んだ。

『生理だから』

 と言った彼女の言葉を疑いもしなかったし、体調が悪そうだったのはそのせいかと納得した。

 数日間、身体を重ねることはできなかったけれど、いつものように共寝はしていたし、生理中、女性は情緒不安定になるものだと思っていた。

 過度に心配せず、見守っていることが正しい方法だと思っていた。

 でも、今考えたら、彼女はなにかに怯えていた。

日に日に顔が青ざめていって、食べる量も減っていた。

 そして、俺が家に帰ると、テーブルの上に記入済みの離婚届けが一枚置いてあった。

 彼女の荷物は全てなくなっていて、当然、彼女もいない。

『絶対に辞めない』と言っていた会社にも姿を見せず、彼女は忽然と姿を消した。

 なにが起こったのか、なにがあったのか、誰にも一切、告げぬまま。

< 211 / 283 >

この作品をシェア

pagetop