シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「怪しいな」

「怪しいですね」

「なんですか、怪しいって! 食事に行っただけじゃないですか!」

 彼女は心外だと言わんばかりに声を荒げる。

「捺美となにを話していたんだ」

 俺の問いに、絶句した彼女はソファにもたれかかって天を仰いだ。

「まじ、めんどくせ~。こんな束縛男と結婚したら、そりゃ捺美も逃げ出すわ」

 おい、俺、社長だぞ? その態度と口調はなんだ、と言いたい気持ちをぐっと堪える。

「捺美って呼んでいるんですね。捺美さんはあなたのことをなんて呼んでいたんですか?」

高城が外面の笑顔を顔に張り付けて優しく聞いた。

「普通に桂木さんですよ。私の方が一個年上だし」

「捺美さんへの呼び方は、ただの同僚にしては親しい呼び方ですよね。捺美さんとは友達ではなかったのですか?」

「別に、私は年下のことは基本呼び捨てだから。敬語も使わないし」

(年上にはせめて敬語を使え)

 とムカムカしながら隣で聞いている。

俺が聞くよりも高城が質問した方が素直に答えているので、色々言いたい気持ちはあるが口を噤んだ。
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