シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「これは交渉だ。ビジネスのように互いの利益を考えて契約しよう。俺は昨日までに結婚相手を決めなければいけなかった。それは、祖父の死期が迫っているからだ。生きている間に結婚式を挙げてほしいと懇願されている。結婚してくれるならば、深夜に仕事をして俺から逃げたことは水に流そう」

「それを出してくるのは卑怯じゃないですか? 職権乱用です。それにそれくらいで結婚を決められるわけないじゃないですか」

「まて、話はこれからだ。お前の望みはなんだ? 俺に叶えられることなら全力を尽くそう」

「私の望み……?」

 社長は真剣な目で私を見つめた。

(私の望みは、あの家から出ることだ。でも……)

 押し黙った私の欲望を引きだすような甘い声で社長は囁く。

「お金ならあるぞ」

 まるで悪魔の囁きだなと思った。

 離婚前提の結婚。死期が迫っているというのなら、そこまで長い結婚生活にはならないだろう。

 でも、だからといってこんな怪しい申し出……。

俯いたまま黙る私に、悪魔はなおも続ける。
< 24 / 283 >

この作品をシェア

pagetop