シンデレラは王子様と離婚することになりました。
数日後、お父さんが突然私の前に現われた。

 会社終わり、タクシーを待つ私に声を掛けてきた。

『捺美……』

『お父さん……。倒れたって聞いたけど、大丈夫なの?』

『倒れてはいない。ただ、少し体調が悪いだけだ』

 そうは言ってもお父さんの顔は青白く、前より痩せてしまったように見えた。

『あの、私……』

 結婚したの。報告しなくてごめんなさい。でも、幸せに暮らしているから。

 そう伝えようと思ったのに、お父さんは私の言葉に被せるように残酷な言葉を吐いた。

『捺美、帰ってきなさい』

 その言葉は、必死に逃れようとしていた私の身体を鎖でぐるぐるに巻いた。

 抗うこともできず、ただ命令に従うロボットのように、お父さんの命令に従う。

 いつもそうだ。義母や義娘の言葉は反抗することができるのに、お父さんの言葉に歯向かうことができない。

 そして私は、実家に戻った。

 義娘は『お父さんが倒れた』と言っていたけれど、実際は疲れで横になることが増えたということだった。

 あの子はいつも物事を自分に都合よく書き換える。

お父さんが倒れたと言った方が、私にインパクトを与えると思ったのだろう。
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