シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「それなら、言いたくないです。すみません」
「そっか……」
と本部長は肩を落として去っていった。
私たちの会話を聞いていた女子たちが、こちらに聞こえるような声で会話を始めた。
「言いたくないってさ、つまりそういうことだよね」
「社長の車で出勤しておきながら、言いたくないってなに?」
「自慢しときながら聞くなって態度おかしくない?」
(私だって好きで社長の車で出勤したわけじゃないのに!)
言い返したくなる言葉を飲み込みながら、必死で仕事に集中する。結果を残さなくちゃ。誰からも文句言われないくらい仕事ができるようになって……。
そう、たとえば、佐伯さんみたいに。
チラリと佐伯さんの方を見ると、バチリと目が合った。佐伯さんは慌てて目を逸らした。
(佐伯さんは、今朝のことどう思ったのだろう。仕事がやり辛くなるなって思われたかな。それとも恋愛なんかしてないで仕事しろと思ったかもしれないな)
佐伯さんから認められたい。そんな思いの中、必死で頑張ってきたから、佐伯さんに呆れられるのは嫌だなと思った。他の人からは、どう思われてもいいけど、佐伯さんには……。
(とにかく仕事だ、仕事しよう)
気持ちを入れ替えて集中する。社長と結婚するとはいっても、すぐに離婚するわけだし、しっかり一人で生きていけるように力をつけないと!
「工藤、この前頼んでおいた集計データ、出来上がっているか?」
佐伯さんから話し掛けられて、ハッとして顔を上げる。
「はい! すぐに印刷して持っていきます」
昨日の夜必死に作ったデータを印刷する。良かった、残業しておいて。
コピー機に印刷物を取りに行くと、高城さんが営業一課のオフィスに向かって歩いてくるのが見えた。なんだか、嫌な予感がする。
高城さんと目が合うと、高城さんはニコっと笑って手招きした。印刷が終わったデータを持って高城さんの元へ行く。
「どうしたのですか?」
「相談役が来社されました。社長のおじい様です」
私は驚いて目を見張り、周囲に聞こえないように小さな声で聞いた。
「え⁉ 危篤だったのでは⁉」
「危篤ではないです。余命宣告はされていますが……。社長が結婚相手を決めたと聞いて、病院から駆けつけてきました。つまり、あなたに会いに」
「そっか……」
と本部長は肩を落として去っていった。
私たちの会話を聞いていた女子たちが、こちらに聞こえるような声で会話を始めた。
「言いたくないってさ、つまりそういうことだよね」
「社長の車で出勤しておきながら、言いたくないってなに?」
「自慢しときながら聞くなって態度おかしくない?」
(私だって好きで社長の車で出勤したわけじゃないのに!)
言い返したくなる言葉を飲み込みながら、必死で仕事に集中する。結果を残さなくちゃ。誰からも文句言われないくらい仕事ができるようになって……。
そう、たとえば、佐伯さんみたいに。
チラリと佐伯さんの方を見ると、バチリと目が合った。佐伯さんは慌てて目を逸らした。
(佐伯さんは、今朝のことどう思ったのだろう。仕事がやり辛くなるなって思われたかな。それとも恋愛なんかしてないで仕事しろと思ったかもしれないな)
佐伯さんから認められたい。そんな思いの中、必死で頑張ってきたから、佐伯さんに呆れられるのは嫌だなと思った。他の人からは、どう思われてもいいけど、佐伯さんには……。
(とにかく仕事だ、仕事しよう)
気持ちを入れ替えて集中する。社長と結婚するとはいっても、すぐに離婚するわけだし、しっかり一人で生きていけるように力をつけないと!
「工藤、この前頼んでおいた集計データ、出来上がっているか?」
佐伯さんから話し掛けられて、ハッとして顔を上げる。
「はい! すぐに印刷して持っていきます」
昨日の夜必死に作ったデータを印刷する。良かった、残業しておいて。
コピー機に印刷物を取りに行くと、高城さんが営業一課のオフィスに向かって歩いてくるのが見えた。なんだか、嫌な予感がする。
高城さんと目が合うと、高城さんはニコっと笑って手招きした。印刷が終わったデータを持って高城さんの元へ行く。
「どうしたのですか?」
「相談役が来社されました。社長のおじい様です」
私は驚いて目を見張り、周囲に聞こえないように小さな声で聞いた。
「え⁉ 危篤だったのでは⁉」
「危篤ではないです。余命宣告はされていますが……。社長が結婚相手を決めたと聞いて、病院から駆けつけてきました。つまり、あなたに会いに」