シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「いいでしょう、結婚。互いの利益のために手を組もうじゃないですか」

「なんかやたら上からだな。お前、見た目によらずいい度胸してるじゃないか」

「こう見えて、けっこう苦労してきてるんで」

 ニヤリと微笑む私に、社長は呆れるように笑って手を差し出した。

「宜しくな、互いの利益のために」

 私たちは力強く握手した。

 結婚することが決まったけれど、これが初めて触れ合った瞬間だった。

「さて、結婚相手も決まったし、式まで急ピッチで進めないとな。じいちゃんが死ぬ前に」

 なんて不謹慎な、と思いながら、横目で睨みつける。

「どこに向かいますか? とりあえず社長のお家に向かっておりましたが、工藤様の家に行きますか?」

 運転手さんが、バックミラーを見ながら話し掛けてきた。

「工藤……様?」

 私の名前は会話中に出てきたから、そこで覚えてくれたのは分かるけれど、様をつけられるのは違和感だ。

「ええ、社長の奥様になられる方ですからね」

 そう言われると現実感が増してきて、なんだか不思議な気分だ。ほぼ初対面に近い相手と結婚することを決めるなんて、社長もおかしいと思うけれど、承諾した私も十分おかしいと思う。

「いや、俺の家でいいだろ」

「え?」
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