シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 自分で言っていて恥ずかしい。社長から目を逸らして、気まずそうにもじもじする私を社長は見下ろした。

 すると、いきなり私の後ろの壁に、ドンっと手をつき、吐息がかかりそうなほど顔を寄せた。

「ずいぶん自分に自信があるんだな。一緒に住んだら俺がお前に手を出してしまうほど、自分は魅力的だと?」

「そ、そういうことじゃなくて、一応あの、確認というか約束というか……」

 顔が近すぎる。逃げられないように壁と社長に挟まれている。

 社長はもしかしたら怒っているのかもしれないけれど、イケメンの壁ドンは破壊力が凄い。心臓がバクバクいっていて、なんの緊張感なのかが分からない。

 恐怖とも違う、ときめきとも違う、とにかく顔が近い。

「なぜ俺がそんな約束をしないといけない? 言っておくが、俺に抱かれたいと懇願する女は山ほどいる。うぬぼれるな」

「……はい、すみませんでした」

 どうして私は謝っているんだろう。俺に抱かれたいと懇願する女は山ほどいると聞いて、なぜか、『でしょうね』という感想が浮かんだ。
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