シンデレラは王子様と離婚することになりました。
一度は泊まってみたいと思っていたホテルで、まさか自分の結婚式を挙げることになるとは。人生とはなにが起こるかわからない。
「いいか、これからは俺に敬語を使うなよ。結婚するのに、上司と部下みたいな会話だったらウェンディングプランナーが怪しむだろ」
「えぇ、今から⁉」
「そうそうその調子」
社長は満足気に笑った。
敬語なしなんて無理! と思って出た言葉がまさかのタメ語だった。とても自然に敬語抜きで話していたため、自分でも驚いた。そもそも社長が友達口調で話してくるので、それにつられてしまうのだ。
正面エントランスに車を停めると、そこには私たちを待っていたらしいホテルのスタッフの方が待機していた。
高城さんはホテルオーナーと話があるらしく、ここで別れることになった。ホテルのスタッフだと思った方はブライダルコンシェルジュの方で、私と社長をブライダルサロンへと案内してくれた。
重厚感のある入り口の扉を開けると、まるで別世界に入り込んだかのようだった。
壁面は白色で薄い桃色の小花がアクセントになっている。高級感溢れるシャンデリアに、部屋の隅に飾られているショーケースの中には、煌びやかなティアラやネックレスなどが美しく並んでいた。
ふかふかのソファに腰掛けると、甘く優雅な香りをはなっている紅茶が出された。
ブライダルコンシェルジュの方は、髪を夜会巻きにして黒のスーツをかっこよく着こなしていた。話し方や立ち居振る舞いが洗練されていてベテラン感が出ている。
社長とコンシェルジュの方が熱心に話しているのを横目で見つつ、私はずっと上の空だった。
現実感が全然しない。こんな素敵な場所で、結婚式を挙げる。さらに結婚相手は、日本中の女子が憧れる伊龍院財閥の御曹司だ。職業はモデルや俳優といっても納得してしまうほどの容貌を持つ上に頭もいい。
我が身に突如降ってきた幸運に狂喜乱舞してもおかしくない状況なのに、私の心は晴れなかった。
嬉しくないわけではないのだ。高級感溢れるキラキラの世界が嫌いなわけじゃない。白を基調としたサロンの内装はロココ調で、紅茶のカップだって青い小花柄がとても可愛い。
自分に似合うかどうかは置いておいて、可愛いものに囲まれると自然と胸が高揚する。
ワクワクしてくる自分もいるのだ。非現実的な世界に飛び込んだようなドキドキ感。
でも素直に喜んでいいとも思えず、自分の結婚式なのに自分のものではないような残念な気持ちもあって、とにかく複雑な心境だ。
「いいか、これからは俺に敬語を使うなよ。結婚するのに、上司と部下みたいな会話だったらウェンディングプランナーが怪しむだろ」
「えぇ、今から⁉」
「そうそうその調子」
社長は満足気に笑った。
敬語なしなんて無理! と思って出た言葉がまさかのタメ語だった。とても自然に敬語抜きで話していたため、自分でも驚いた。そもそも社長が友達口調で話してくるので、それにつられてしまうのだ。
正面エントランスに車を停めると、そこには私たちを待っていたらしいホテルのスタッフの方が待機していた。
高城さんはホテルオーナーと話があるらしく、ここで別れることになった。ホテルのスタッフだと思った方はブライダルコンシェルジュの方で、私と社長をブライダルサロンへと案内してくれた。
重厚感のある入り口の扉を開けると、まるで別世界に入り込んだかのようだった。
壁面は白色で薄い桃色の小花がアクセントになっている。高級感溢れるシャンデリアに、部屋の隅に飾られているショーケースの中には、煌びやかなティアラやネックレスなどが美しく並んでいた。
ふかふかのソファに腰掛けると、甘く優雅な香りをはなっている紅茶が出された。
ブライダルコンシェルジュの方は、髪を夜会巻きにして黒のスーツをかっこよく着こなしていた。話し方や立ち居振る舞いが洗練されていてベテラン感が出ている。
社長とコンシェルジュの方が熱心に話しているのを横目で見つつ、私はずっと上の空だった。
現実感が全然しない。こんな素敵な場所で、結婚式を挙げる。さらに結婚相手は、日本中の女子が憧れる伊龍院財閥の御曹司だ。職業はモデルや俳優といっても納得してしまうほどの容貌を持つ上に頭もいい。
我が身に突如降ってきた幸運に狂喜乱舞してもおかしくない状況なのに、私の心は晴れなかった。
嬉しくないわけではないのだ。高級感溢れるキラキラの世界が嫌いなわけじゃない。白を基調としたサロンの内装はロココ調で、紅茶のカップだって青い小花柄がとても可愛い。
自分に似合うかどうかは置いておいて、可愛いものに囲まれると自然と胸が高揚する。
ワクワクしてくる自分もいるのだ。非現実的な世界に飛び込んだようなドキドキ感。
でも素直に喜んでいいとも思えず、自分の結婚式なのに自分のものではないような残念な気持ちもあって、とにかく複雑な心境だ。