シンデレラは王子様と離婚することになりました。

第四章 王子様の魔法

 目を開けると、ふかふかのベッドの中にいた。ここは社長の家のゲストルーム。
 そうだ、私は昨日、車の中で爆睡して、マンションに着いたら社長が私をお姫様抱っこして運ぼうとしたところで起きたのだ。
 さすがに起きて良かった。二日続けて醜態をさらすところだった。
 でも、起きたことはいいけれど、あまりにも眠すぎて、ふらふらになりながら気合と根性でお風呂だけは入って寝たのだった。
 昔から私は、気を失うように眠りにつくことがある。学校に行きながら家事もして、いつも慢性的な寝不足だったから、体が強制的にスイッチをオフにするのである。

(昨日はけっこう早くに寝たから体が楽だな……って、今何時⁉)

 飛び起きて時計を見た。

「八時⁉ やばい、遅刻だ!」

 社長は⁉ とりあえず社長に謝らないと!
 そう思ってパジャマ姿のまま部屋を出て、リビングに掛けこむ。

「ごめんなさ……」

 とにかく謝ろうと思って発した言葉が途中で止まる。
 リビングに入って、目に飛び込んできた光景に、頭が一瞬混乱した。

(しゃ、社長が、料理を作っている!)

 しかもご丁寧にデニム生地風のエプロンまで着用して!

「おはよう。ちょうど良かった、今出来上がったところだ」

 社長は朝の光を浴びて、笑顔がキラキラに光っている。

(これは、一体、どういうこと?)

 昨日まで社長の冷蔵庫には飲み物以外なに一つ入っていなかった。それに、社長は朝ごはんを食べるタイプではないし、ましてや料理を作るタイプでもない。
 それが、なぜ……。
 口を開けて驚き固まっている私を尻目に、社長はダイニングテーブルに作った料理を並べていく。聞こえるか聞こえないかくらいの音量で鼻歌をうたっているので、とてもご機嫌ということはわかった。
 社長が作った料理は、ホテルのルームサービスで提供される朝食のようだった。
 真っ白な丸皿に、エッグベネディクトとナッツをまぶしたベビーリーフのサラダがオシャレに盛りつけられている。さらに、ガラスの器に入れられたヨーグルトには、イチゴやゴールデンキウイなどの果物がトッピングされ、上から蜂蜜がかけられている。
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