シンデレラは王子様と離婚することになりました。
携帯のアラーム音が深い眠りから私を引きずり出す。

 ああ、もう朝だ。洗濯して朝ご飯作って……。

 そうだ、リビングも掃除機かけなきゃ。きっと、お菓子の食べかすが床に散らばっている。

 目を開けると、見慣れぬ光景が広がっていた。ふかふかのベッドに、シックな壁紙。

(あれ、私……)

 誰もいない部屋で、記憶を手繰り寄せる。

そうだ、昨日……っていうか今日か。社長の家に泊まることになったんだ。お風呂に入って、スーツの除菌終わりを待っていたところで……ええと、私、どうやってこの部屋に来たのだろう。

 壁には、しわも伸びてまるで本当にクリーニングに出したかのような仕上がりのスーツがハンガーに吊り下げられていた。

 あれ、私、本当に記憶がない。椅子に座ったまま寝てしまった気がする。ということは、ベッドまで運んでくれたのは社長だろう。
< 39 / 283 >

この作品をシェア

pagetop