シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 高城が吃驚の声を上げた。

「祖父の命令だ。失敗は許されない。今日中に決めるぞ」

「そんな急に決めていいのですか?」

「結婚相手なんて誰だろうが一緒だ。どうせ続かない。とにかく祖父に結婚した姿を見せられればそれでいい」

「え、相談役は結婚式に出席するつもりですか?」

「本人はそのつもりだ」

「うわ~、入院したのに迷惑~。でも主治医が反対しようがなんだろうが、絶対出席するでしょうね」

「あの人は言い出したらきかないから」

 なにがなんでも実行させる。祖父はそうやって会社を大きくしてきた。
 それにしても、どの写真を見ても、みんな一緒に見える。全員ある程度可愛いが、性格がきつそうな我儘そうな顔をしている。

(もういいや、プロフィールで選ぼう)

 特に両親の職業を入念に読み込む。結婚もビジネスだ。感情を入れなければすぐに決まる。
 ……そう思っていたのに。
 外はすっかり暗くなって、さすがに焦り始めて数時間後。気がついたら深夜になっていた。

「ああもう、無理だ」

 デスクチェアの背もたれに寄りかかり、天井を見上げる。

「そりゃそうですよ、一日で決められるわけないですよ」

 応接のソファに座りながら、ナッツを食べて寛いでいる高城が言った。

「違う、結婚自体が無理だ。諦めよう」

「えぇ~、しらみつぶしに会ってみたらどうですか? 運命感じる子がいるかもしれないじゃないですか」

「いや、俺にはわかる。無理だ」

「結婚はビジネスだとか言っておきながら、思いっきり感情入れてえり好みしているじゃないですか」
 その通りすぎて腹が立つ。
 別に結婚に夢を見ているとか、恋愛がしたいだとか、そういうわけではないのに、決めようと思うと心が拒絶する。
 無理だ、俺には結婚は無理だ。

「帰ろう、遅くまで付き合わせて悪かったな」

「相談役にはどう説得するつもりですか?」

「正直に伝えるさ。だが、あの手この手で結婚させようとしてくるだろうが、全力で断る。高城もそのつもりでいろ」
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