シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「どこかで夕飯を買ってくればいいじゃない」
『はあ?』
おかしなことは言っていないはずだが、継娘の癪に障ったらしい。
『ちょっと、お母さ~ん、捺美が夕飯買ってこいって言ってる~』
近くにいるらしい母親に嫌味ったらしく告げ口をする。
ああ、もう面倒くさい。こめかみの辺りがズキズキしてきた。
『捺美、意地悪言ってないで、早く帰ってきなさいよ』
電話の相手は継娘から継母に代わった。
「意地悪じゃなくて、まだ仕事が残っているの。そんなに毎日、定時で上がれるわけないじゃない」
『生意気な子ね。お父さん、捺美が夕飯作らないって言ってるんだけど!』
継母は私を責めて、挙句の果てには父を出してきた。
『捺美、仕事が忙しいのか?』
継娘や継母とは違う、穏やかで優しいトーンで父は話した。
「……うん」
『そうか。だが、仕事は後からいくらでもできるだろ。早く帰ってきなさい』
「……わかった」
父から言われると断れない私。継娘や継母はそれをわかって父を利用してくる。私が父の頼みを断れないように、父も継娘や継母の頼みを断れない。それが、どんな理不尽なことだとしても。