シンデレラは王子様と離婚することになりました。

第七章 離婚までのカウントダウン

甘くて穏やかな日々は数週間続いた。
 隣に大翔がいることが当たり前になってきて、この日々がずっと続くかもって思っていたし、そう願っている自分もいた。
 でも、そんなことありえない。この結婚は、離婚ありきの契約結婚。終わりは突然に訪れる。
 ――大翔のおじい様が亡くなられた。
 お医者さんの診立ては、残酷なほどに正確だった。
 結婚式に来てくれて、あんなに喜んでいたおじい様が亡くなったことはショックだった。それと同時に、全てが音をたてて崩れていくようなそんな恐ろしさもあった。
 一報を聞いてからは、怒涛のような忙しさで、葬儀の準備に会社一丸となって取り組む。
 マスコミも駆けつけて、大翔のおじい様がいかに凄い人物だったのかが分かる。
 大翔は冷静に淡々と進めていた。でも、顔が真っ白で疲れているのがよくわかった。たった一人の肉親。どれほど深い喪失感なのか、私は想像することしかできないけれど、大翔にしっかり寄り添おうと思った。
 契約妻だけど、でも今はまだ、大翔の妻だ。妻として夫を支える。自分ができることを精一杯やり遂げようと思った。
 大規模な葬儀も全て終わると、大きな脱力感に包まれた。

(終わった……)

 久々にゆっくりできる週末。リビングのソファに腰掛けながら、ぼんやりとテレビを見ている大翔。
 なにを考えているのかはわからないけれど、大翔にとっておじい様の存在がとても大きいものだったというのは伝わってくる。

(よし、夕飯でも作ろう!)

 味のこえた大翔に、手料理を振る舞うことをためらっていたけれど、よほど美味しくない出来でなければ、食べられるでしょ、と自分を納得させる。
 作りながら、不安になる。いつまで夫婦でいられるのだろう。
 契約に乗ったときは、すぐに離婚できる方がありがたいと思っていた。
 でも今は、大翔と離れてしまうのが寂しいと思っている。別れたら、社長と大勢いる社員の一人になってしまう。
 もう二人きりで会うことはないだろうし、会話を交わすことさえ難しくなる。
 想像するだけで、胸がぎゅっと痛くなる。
私だけに向けられる大翔の笑顔。大翔とのキス。
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