シンデレラは王子様と離婚することになりました。
社長は怒りながら後部座席のドアを開けた。

「高城さんは完璧な秘書に見えるけど……」

 私が言うと、社長は呆れるような顔を見せた。

「あいつは適当で調子がいいだけだ。これからわかる」

 後部座席に乗り込むと、高城さんが照れた様子で笑っていた。

 一つも褒められていないのになぜか喜んでいる。たしかにちょっと謎だ。

 車が発進してしばらくすると、急激な眠気が襲ってきた。瞼が重くて開けていられない。何度もカクカクと首が落ちそうになって、ハッとして目を開ける。

(いかん、いかん、今寝たら爆睡して起きられなくなりそう)

 そう自分に言い聞かせて、なんとか起きていようとするのだけれど、途中で首がまったくカクンカクンいわなくなった。

 柔らかくて温かい。社長が側に寄ってきて、肩を貸してくれたのだ。

(社長って意外と優しい人なのかもしれない)

 そんなことをうっすら思いながら、深い眠りに落ちていった。
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