シンデレラは王子様と離婚することになりました。
  社長もそれ以上なにも言わず、私たちはしばらく食べることに集中した。

 急に話が途切れたら、なんとなく気まずくなるのが普通なのに、どうしてか沈黙も居心地が良かった。

 社長が作った朝食に舌つづみを打ちながら、どちらからともなく世間話をする。二人きりだというのに嫌な緊張感もなく、かといって男として意識していないでもなく、不思議な空気感だった。

 正直、同世代の女子と二人きりで食事している方が気を使ってしまう。社長と二人でいると、自然と素が出て、気が付いたら笑っている。

 食事を終えて、片付けをしようと立ち上がると社長に制止された。

「いいから、いいから。それより出かけるから準備しろよ」

「え、出かけるんですか? どこに?」

「昨日は完全に敬語なくなってたのに、今日は敬語なんだな」

「あ、本当だ」

 本当だって言っておきながら、出てきた言葉がタメ語で、顔を見合わせて笑い合った。

「楽な方でいいよ。それより早く準備してこい」

「準備っていっても、着る服が一着しかないんですよ」

「だからだよ、ほら着替えてこい」
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