シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 お金持ちってスケールが違うなあ、とつくづく思う。

「あの、選ぶとき、遠慮した方がいいですか?」

「その質問するってことは、遠慮する気ないだろ」

 社長は笑って受け入れている。こんな機会滅多にないというか、もう二度とないと思うので社長に思いきり買ってもらおうと思った。

 社長にエスコートされながらブティックに入ると、高い天窓から柔らかな太陽の光が床に拡がっていた。雑踏や騒音は遮断され、街の喧騒とは異なる特別な空気感を放っている。

 棚には一目でわかるほど上質な生地から仕立てられたワンピースやブラウスが並び、壁にはアクセサリーやバッグがまるで宝石のように端正に並べられていた。

 天井には見事なシャンデリアが飾られていて、二階へと続く螺旋階段を照らしている。

 上品な笑顔を浮かべる店員さんが近寄ってきて、社長となにやら話し始めたので、私は一人で店内を歩きまわった。

(こんな高級なブティック、初めて入った。怖くて値札が見られない)
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