シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「俺と結婚してほしい」

 社長は少し緊張しているような真剣な眼差しで私を見つめた。

 まるで夢の中にいるようだ。お酒でふらふらした頭の中で、ロマンチックなキャンドルに囲まれながらプロポーズを受けている。

「……はい」

 フニャっとした笑みを浮かべて、結婚を承諾する。凄くいい気分だ。

 社長が指輪を取り、私の薬指にダイヤの指輪をはめる。いつリサーチしたのか、指のサイズはピッタリだった。

 左手を顔まで掲げて、指輪をしげしげと眺める。

「うわ~、夢みたい」

 呂律がまわっていない口で呟く。私はずっとへらへらと笑っているのに対して、社長はやけに真剣な表情だ。

「今まで辛かった分、俺が全部受け止めて、絶対に幸せにするから」

「私が辛かったこと、どうして知っているんですか?」

 へらへらしていた顔が曇り、悲しそうな表情を浮かべた私を見て、社長は唇を噛みしめた。

 そして、急に強く抱きしめた。社長の胸の中に顔がうずまる。驚いて固まっている私に、社長は耳元で囁いた。

「嫌なら嫌って言ってくれ。離したくないけど、離すから」
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