シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 目が覚めると、大翔の腕の中にいた。幸福感に胸を満たされながら眠りに落ちる、なんて贅沢なのだろう。
 滑らかなシーツの肌触り。下着姿のまま寝るのは初めてなので、こんなに気持ちいいとは知らなかった。
 そして、男の人の筋肉質な体の質感と、大翔がいつも使っているボディソープの匂い。すべてが少しくすぐったいような喜びに溢れている。
 大翔は、まるで私を離さないと宣言するかのように、がっちりと私の肩を抱いて寝ている。胸が上下に動いて、寝入っているはずなのに、離さない。
 寝ている大翔の顔は、とても整っていて、いつもより幼い雰囲気を感じた。キメが整った綺麗な肌。思わず触りたくなって、指先で軽くつんつんと押すと、大翔の瞼がゆっくりと開いた。

(あ、起こしちゃった……)

 大翔は私と目が合うと、頬を緩ませた。

「なに、イタズラしているの」

「イタズラじゃないよ、綺麗な肌だなと思って触っていたの」

「捺美の方がよっぽど綺麗だよ」

 そう言って、大翔は足を絡ませながら私を抱き寄せた。
 昨日の夜のことを思い出す。恥ずかしいけれど、刺激的で、蕩けるような夜だった。

「身体は大丈夫?」

 大翔が私のことを心配して優しく聞く。

「うん、思っていたより、大丈夫」

 なにせ、初めてだった。身体が少し重いけれど、大翔がゆっくり時間をかけて、まるで繊細なガラス細工を扱うように、優しく丁寧に進めてくれたので、想像していたほどの痛みはなかった。
 チュっとリップ音を響かせて、大翔は私のおでこにキスをした。そして、優しく頭を撫でられる。
 このまま、一日中こうしていたいなと思った。
 大翔に抱きしめられて、二人だけの世界の中で時を過ごしたい。
 他のことは全部放り出して、二人だけの甘い世界に逃げてしまいたい。

「ずっとこのまま捺美を抱きしめていたい。離したくない」

 大翔は私の頬や首先にキスをしながら言った。

「私も、ずっとこうしていたい」

 すると、大翔の動きが止まった。

「じゃあ、ずっとこうしていよう」

「え?」

「今日は休みにしよう」

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