シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「ええ、本気で言っているの?」
「当たり前だ、俺は社長だ」
「職権乱用~」
笑いながらも、強く否定しない私もどうかしている。大翔の側にいたい。大翔と離れたくない。
今までの真面目で優等生な私は、本当の私じゃない。本当は、サボりたいけど、そんな勇気がなかっただけだ。肩の力を抜いて生きることができなかっただけ。
流されるまま、身を預ける。今からもう一度重ねあったら間違いなく遅刻だ。
でも、今はそれよりも大翔と一緒にいたい。
結局その日は、夫婦揃って午後から出勤した。
きっと大事な用事があったのだろうと思われて誰からも何も言われなかったけれど、率先して仕事を手伝うことに努めた。
分厚い壁を作ってきた私が、自分から話し掛けて仕事を手伝うなんてこれまではなかったことだ。少しだけ、余裕が生まれたのかもしれない。人間は、そこまで怖くないよって。
契約結婚を解消して、大翔と本物の夫婦になれて。
幸せの絶頂だった。毎日が、キラキラと輝いていた。
でも、この幸せは、神様が最期にくれたプレゼントだったのかもしれない。
ずっと虐げられた生活をしていた私に、『生きることは辛いことだけじゃない、素敵なこともあるし、素敵な人もいる』っていうことを伝えたかったのかな。
……幸せは、長くは続かなかった。
大翔と結ばれてから数日後。明るくなり、周囲とも話すようになった私は、女子社員から誘われて外のランチへと出かけた。
誘われたとはいっても、会話の流れで『あの店、美味しいよ』という会話をしていたので『私も行ってみたいです』って言ったら、『じゃあ、今日行く?』みたいな流れだ。
今までだったら、『いや、今日はちょっと』と言って断っていたけれど、彼女の雰囲気がカラっと明るくて居心地の良さを感じていたから、思いきって行ってみることにしたのだ。
こんなこと、普通の人にとっては、日常のありふれた一コマなのだと思う。
でも、いつもは会社の中にある社食を隅っこの方で、一人で食べていた根暗な私にはとっては大冒険だ。
少しずつ、良い方向に変わっている気がしたのに。私は変われるって思っていたのに。未来は明るいと思って信じていたのに。
ランチはとても楽しかった。社長夫人だからといって変に気を使われることもないし、余計な詮索も余計な嫉妬もなにもない。
もっと人を遮断せず、心を開いていこうと思ったのに。素敵な一日になりそうだったのに。
会社に帰る途中、急に帽子を目深にかぶった人物に、呼び止められた。
その瞬間から、世界は暗く淀んでいく――
「当たり前だ、俺は社長だ」
「職権乱用~」
笑いながらも、強く否定しない私もどうかしている。大翔の側にいたい。大翔と離れたくない。
今までの真面目で優等生な私は、本当の私じゃない。本当は、サボりたいけど、そんな勇気がなかっただけだ。肩の力を抜いて生きることができなかっただけ。
流されるまま、身を預ける。今からもう一度重ねあったら間違いなく遅刻だ。
でも、今はそれよりも大翔と一緒にいたい。
結局その日は、夫婦揃って午後から出勤した。
きっと大事な用事があったのだろうと思われて誰からも何も言われなかったけれど、率先して仕事を手伝うことに努めた。
分厚い壁を作ってきた私が、自分から話し掛けて仕事を手伝うなんてこれまではなかったことだ。少しだけ、余裕が生まれたのかもしれない。人間は、そこまで怖くないよって。
契約結婚を解消して、大翔と本物の夫婦になれて。
幸せの絶頂だった。毎日が、キラキラと輝いていた。
でも、この幸せは、神様が最期にくれたプレゼントだったのかもしれない。
ずっと虐げられた生活をしていた私に、『生きることは辛いことだけじゃない、素敵なこともあるし、素敵な人もいる』っていうことを伝えたかったのかな。
……幸せは、長くは続かなかった。
大翔と結ばれてから数日後。明るくなり、周囲とも話すようになった私は、女子社員から誘われて外のランチへと出かけた。
誘われたとはいっても、会話の流れで『あの店、美味しいよ』という会話をしていたので『私も行ってみたいです』って言ったら、『じゃあ、今日行く?』みたいな流れだ。
今までだったら、『いや、今日はちょっと』と言って断っていたけれど、彼女の雰囲気がカラっと明るくて居心地の良さを感じていたから、思いきって行ってみることにしたのだ。
こんなこと、普通の人にとっては、日常のありふれた一コマなのだと思う。
でも、いつもは会社の中にある社食を隅っこの方で、一人で食べていた根暗な私にはとっては大冒険だ。
少しずつ、良い方向に変わっている気がしたのに。私は変われるって思っていたのに。未来は明るいと思って信じていたのに。
ランチはとても楽しかった。社長夫人だからといって変に気を使われることもないし、余計な詮索も余計な嫉妬もなにもない。
もっと人を遮断せず、心を開いていこうと思ったのに。素敵な一日になりそうだったのに。
会社に帰る途中、急に帽子を目深にかぶった人物に、呼び止められた。
その瞬間から、世界は暗く淀んでいく――