シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 残業? なにそれ美味しいの? と言いたい勢いだ。
 社長なのだから、社員の倍は働いて当然と思っていたが、それは覚醒前の話だ。
 最強になった俺は、社員の倍働いても時間が余る。跳ねるような足取りで家へと帰る。もちろん、愛する我が妻とイチャイチャするためだ。
 脳内では、会社から帰ってきた捺美を玄関に迎えに行って抱いている。
 でもさすがにそれは引かれそうだ。自分はこんなに性欲が強かっただろうか。
 叶うならば、一日中捺美を抱いていたい。でも、捺美は初めてだったので、あまり身体に無理はさせたくない。……って、朝から第二ラウンドに持ち込んで会社を遅刻させた奴が言うセリフではないなと、自分で突っ込みを入れる。
 捺美のために夕飯を作る。
 これまで自分のためにすら料理を作ったことがないのに、自分でも驚く変化だ。
 捺美と一緒に外食するのも好きだし、ウーバーイーツや買ってきたものを家で食べるのも好きだ。でも、手料理もやってみるとなかなか楽しい。
 なにより、捺美の喜ぶ顔を見られるのが、一番のご褒美だ。

「ただいま~」

 捺美の喜ぶ顔を想像しながら料理を作っていたら、もう本人が帰ってきた。玄関に迎えに行っちゃう俺。

「おかえり、早かったな」

「大翔こそ」

 そりゃ俺は、捺美に早く会いたかったからな。超特急で終わらせてきたぜ。……と、心の中で思っていたら、捺美が恥ずかしそうに頬を染めながら呟くように言った。

「……大翔に会いたかったから、早く終わらせてきたの。遅刻したのに、おかしいよね」

「捺美!」

 ガバっと勢いよく抱きついた。悶絶級の可愛さ。とんでもない破壊力。
 もうこれは、このままの勢いで捺美を食べてしまっても、俺を咎めることは誰にもできないだろう。だってこんなこと言われて理性保てと言われる方が無理な話だ。

「捺美、このままベッドに……」

「え、無理。お腹空いた」

 見事なまでにはっきりと斬られた。
 まあ、確かに、捺美はそういう女だよ。ツンデレが半端ない。でもその我が道を貫くところも好きだし、だからこそ、たまに見せるデレ感がたまらない。

「夕飯を作っていた。もうすぐ出来上がるから着替えてこいよ」

「本当⁉ 嬉しい!」

 手を合わせて、太陽のような輝く笑顔を見せる捺美。あ~可愛い、最高。
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