シンデレラは王子様と離婚することになりました。
彼女は少し悲しそうに言った。捺美が行方不明になったということは、社内中が知っている。

「あなたと捺美さんは性格が違うように見えますが、気が合ったということですか?」

 高城の目が光る。だんだん本質に切り込むつもりのようだ。

「気が合うっていうか、波長が合うかんじがする。あの子、見た目によらず芯が強いし根性があるでしょ。私、仲間とつるんでいないと不安って感じる、ザ・女子系は苦手だからさ」

 あ~、なんだかわかる気がする。捺美は、見た目華奢で女の子っぽいけれど、中身は根性すわっているところがあるからな。
 表面的じゃなく、しっかり捺美の中身を見ているな、この子。
 口も悪いし態度も悪いが、案外根はいい奴なのかもしれない。

「なるほど。桂木さんと捺美さんは友情を深めていたということですね」

「なんかその言い方、重いな。普通に飯を食べていただけだよ」

「ちなみに、どんなお店に行っていたのですか?」

「会社の近くにある激辛ラーメン楓」

 え、あそこ⁉ 昼時になると、サラリーマンと男子学生が並ぶというわりと有名な店だ。俺も聞いたことがあるが、並んでまで食べたいとは思わなかったから行っていない。ちなみに女の人が並んでいるのは見たことがない。
 見た目のいいこの二人が、あそこの店に行ったらさぞかし目立っただろう。

「あのお店はかなり辛いですよね。捺美さんの反応はどうだったのですか?」

「辛い、辛い、言って、涙と汗が出て笑っていた。やたら可愛かった」

 涙と汗が出ているのに綺麗な顔を保てる捺美はさすがだ。
 桂木は女子なのに、捺美のことを可愛いと言うあたり、中身おっさん気質なんじゃないだろうか。
 それにしても、想像するだけで可愛い。激辛ラーメン食べて笑っている捺美を見たい。軽く嫉妬心をおぼえる。

「お店ではどんな話をしたのですか?」

「別にたいした話してないし、内容も覚えてないよ。ただ……」

「ただ?」

 高城の目が鋭くなった。俺も息を飲んで続きを待つ。

「食べ終わって会社に戻る途中に、捺美が呼び止められた」

「誰に?」

「知らない。帽子を目深に被った女の人だった。たぶん、私たちと年齢はあんまり変わらないと思う」

「なんて言って呼び止められたのですか?」
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