シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 キッチンに行き、冷凍庫から棒アイスを取り出し、食べながら大翔の側に寄った。

 隣に座り、書類を覗きこむと、英文だったので読む気が失せた。

「仕事?」

「うん」

「大変だねぇ」

 大翔の肩に背中を寄せて、もたれかかりながらアイスを食べる。仕事の邪魔にならないように大人しくしているという考えは、残念ながら私にはない。

「重い」

「そうか、頑張れ」

 もはや大翔が社長であるということは、忘れ去られているのではないかと思う言動だ。忘れているわけではないのだけれど、私の中では、もう大翔は大翔だ。

「人の肩を背もたれにして、優雅にアイスとはさすがだな」

「うむ、くるしゅうない」

 大翔はふふっと笑って、再び書類に目を落とした。わがままも甘えも、全部許容してくれる。大翔といると、自分が自分でいられる。

 なんだろう、この胸の奥から湧き上がる温かい気持ち。大翔の側は、居心地がいい。

「俺にもエネルギー補給させろ」

「ひゃああ」

 急に大翔が動くから、私の頭はソファの上に落っこちた。

 真上から意地悪な瞳で私を見下ろす大翔。下から見ても完璧すぎるほどかっこいい。しかも不敵な笑みがよく似合う。
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