ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「?」
羽倉くんが不思議そうに振り返る。
「えっと、――も、もし夜眠れてないなら、電話でも子守唄歌おうか? ……なんて」
「……」
少しの沈黙。
じわじわと顔が赤くなっていくのがわかる。
(……な、何言ってんの私! これで要らないって言われたら超恥ずかしいんだけど……!)
と、目の前にスマホが差し出された。
「え?」
「読み取って」
画面にはQRコードが表示されていて私は目を見開く。
「あ、うん!」
慌ててポケットからスマホを取り出し、私はそのQRコードを読み取った。
「何時でもいいから。大体起きてる」
「うん。わかった!」
「じゃあ」
「本当に、ありがとうございました!」
そうして羽倉くんは店を出て行った。
と、入れ替わるように先輩が店に入ってきて、彼の後ろ姿を驚いたように二度見した。
「え、ちょ、今のってもしかしてまたKanataじゃない!? うわーショックー! って小野さんどうしたの? 顔真っ赤だけどひょっとしてKanataと何かあった!?」
「え……?」
(真っ赤?)
言われて、自分の頬が火照っていることに気付いた。
「え、や、別に何もないですよ!?」
慌てて弁解しながら、そんな自分に動揺する。
(――こ、これって、ちょっとマズイかもしれない~~!?)