ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「あ~記者の方ならお断りですんで~」
妹尾くんが間に入ってくれるが、女性は名刺を差し出し言った。
「記者じゃないわ。突然ごめんなさい。私、芸能事務所でKanataのマネージャーをしている谷山と言います」
妹尾くんが受け取ってくれた名刺を見て、驚く。
それには本当に奏多くんが……Kanataが所属している芸能事務所の名前が書かれていた。
「少し時間いいかしら? すぐに済むから、歩きながらでもいいの」
私は少し考えた後で。
「はい」
しっかりと頷いた。
妹尾くんにはお礼を言って学校に戻ってもらった。
そんな彼の背中を見て、谷山さんが首を傾げる。
「えっと、彼は?」
「あ、部活の仲間です。……昨日から私、記者の人に話しかけられて、そしたら途中まで送ってくれるって」
「そうだったの……怖かったでしょう。こんなことになって本当にごめんなさいね」
申し訳なさそうに謝罪されて、慌ててしまう。
「いえ、そんな……。それより、奏多くんに、羽倉くんに何かあったんですか?」
嫌な予感がしつつ訊くと、谷山さんは意を決したように口を開いた。
「単刀直入に言わせてもらうわね。小野さん、Kanataと別れて欲しいの」
「え……」
喉から、自分のものでないような小さな声が漏れた。