ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「よしっ」
心を決めて。
いつもの時間、私は奏多くんに電話をかけた。
コールが止まる。
『りっか?』
「奏多くん……」
その優しい声を聞いて、瞬間決心が揺らぎそうになる。
『――? りっか、何かあった?』
「え?」
『なんか、声に元気がない気がして』
「あ……えっと、」
膝の上で強く手を握りしめる。
「……あのね、奏多くん、お願いがあるの」
『なに?』
「私と、別れて欲しいの」
少しの沈黙。
『……え? なに、ごめん、よく聞こえなかった』
そう言った声が少し震えていた。
私はそんな彼にもう一度告げる。
「別れたいの」
『……なんで?』
「今日ね、記者の人が話しかけてきて」
『え!? 大丈夫だった!?』
心配そうな声が返ってきて、私は淡々と続ける。