ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「うん。だけど、すごく怖くてね。……私、奏多くんと付き合ってく自信、無くなっちゃったの」
『りっか……?』
「それに、今回こんなことになって、やっぱり住む世界が全然違うなぁって」
『りっか、』
「これからもこんなことが続くなら、正直、めんどくさいなぁって思っちゃったの」
『りっか……!』
彼の声がどんどん荒くなっていく。
「だから、別れて欲しい」
『嫌だ』
「だから、ごめんなんだけど、連絡ももうしないし、しないで欲しい」
『嫌だって……りっか!』
「ごめんね。今までありがとう。――Kanataのこと、ずっと応援してるから」
『りっか! りっ――』
そこで、私は通話を切った。
そのまま震える手で彼の連絡先を削除する。
(……これで、良かったんだ……)
握り締めたスマホに涙がぽたぽたと落ちていく。
嫌なことをたくさん言ってしまった。
でもこれで、奏多くんが私のことを嫌ってくれたらいいと思った。
(すごく辛いけど、これで良かったんだ……っ)
――これで本当に、もう二度と会えない。
「ふ……、うっ……っ」
顔を覆い、私はひとり泣き崩れた。
――外は酷い雨になっていて、そんな私の泣き声をかき消してくれた……。