ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい


 ベッドに腰掛け、私は何度目かの溜息を吐いた。

(どうしよう……)

 妹尾くんのことは好きだけれど、でもそれは友達としての“好き”で。
 今はそれ以上、考えられなかった。

 そのとき時計が0時を回った。
 いつも彼に電話をしていた時間だ。

(奏多くん、ちゃんと眠れてるかな……)

 気付けばそんなことを考えていて、ぶんぶん首を振る。

(私はもう、彼女でもなんでもないんだから!)

 そのままベッドに横になる。

(でも、想うだけなら許されるかなぁ……)

 また涙が溢れてきて、私はぎゅうっと強く目を瞑った。



 妹尾くんは次の日にはもういつも通りの彼に戻っていた。
 だから私も、何も無かったように彼に接した。

 でも、学祭を直前に控えたある日、彼が植松くんとこっそり話しているのを聞いてしまった。

「うっわ。お前、最悪」
「わかってんし~。でもさ~、見てらんないんだもん最近のりっかちゃん」
「それって同情ってこと?」

 少しの間があって。

「ううん。りっかちゃんのことは本気。……でも、あいつのことも嫌いになれないんだよなぁ~。なんであんなにビジュ良いんだよ~~」

 そうして頭を抱えてしまった妹尾くんの背中を、植松くんが苦笑しながらぽんぽんと叩いていた。

 私はふたりに気付かれないよう、静かにその場を去った……。

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