ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
――結局、何を言ってもダメだった。
「りっかねぇ、その人誰?」
「外国の人?」
保育園から出てきた弦樹と絃葉が、私の背後でニコニコ手を振っている妹尾くんを不思議そうに見上げた。
私はほとほと疲れて適当に答える。
「……学校の、知り合い」
「ハハ、俺はね、りっかねぇちゃんの彼氏だよ~」
「は!? 違うし!」
すぐに否定するが案の定ふたりは目を輝かせた。
「りっかねぇの彼氏!?」
「りっかねぇ、外国の人と結婚するの!?」
「違うから!」
と、妹尾くんはふたりの前にしゃがみ込んで人懐っこい笑顔で言った。
「ふたりとも、お名前教えて?」
「俺、弦樹!」
「私は絃葉!」
「弦樹くんと絃葉ちゃんか。りっかねぇちゃんのこと好き?」
「大好き~!」
「怒ると怖いけどね」
「ハハ、そっかそっかぁ、俺も好きだよ、りっかねぇちゃんのこと」
「!」
不覚にもドキッとしてしまう。
でもこういうところは流石陽キャというか、子供にも好かれるタイプだなと思った。