ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
思ってもみなかった質問に一瞬ぽかんとしてしまう。
「……あ、ええと、一緒に帰ったっていうか、勝手について来て」
「もしかして、俺とのことであいつに何か言われた?」
ぎくりとする。
「えっと……ほら、やっぱみんなに揶揄われたりしたら嫌じゃない? だから、内緒にしてってお願いしたら」
「うん」
「その、……付き合おうって、言われて」
「……」
「も、勿論、OKはしてないよ! あいつほんと噂通りっていうか軽過ぎだよね!」
ハハハと空笑いすると、羽倉くんは俯いてしまった。
「……良かったのに」
「え?」
「皆に揶揄われても、俺は良かったのに」
「……!」
(それって、どういう……?)
ドキドキした。
と、羽倉くんはこちらに一歩近づくと突然、私の肩に額を乗せた。
「は、羽倉くん!?」
びっくりし過ぎて声がひっくり返ってしまった。
「……嫌だ」
「え?」
「りっかが、あいつの……他の誰かのものになるのは嫌だ」
私は大きく目を見開く。
顔を上げた羽倉くんは見たことのない、切なげな表情をしていて。
「ねぇ、りっか。俺だけのものになって」
「……っ!?」