ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
4曲目「困惑」
「――ちょっと、考えさせて。まだ頭混乱してて……」
そう俯き答えると、羽倉くんは「わかった」と言って去っていった。
「ふぅ……」
私はお風呂の中で溜息を吐いた。
(羽倉くん、あんなこと言うんだ……)
――俺だけのものになって。
思い出してまた顔が熱くなる。
(嬉しい……、けど)
羽倉くんを好きになってしまったら大変な気がした。
もし付き合って、もし彼がKanataだと周囲にバレてしまったらきっと私はファンから袋叩きに遭うだろう。
それに芸能界なんて全くわからないけれど、やっぱり綺麗な人が多いイメージで。
(私なんかすぐに捨てられちゃいそう……傷つきたくはないなぁ)
お湯に口まで浸かってぶくぶくと泡を吐く。
(……ていうか、なんで私なんだろう。我儘を聞いてあげてたから? ……いつから私のこと、好きになってくれたんだろう)
と、そこで私はザバっとお湯から顔を出した。
「や、好きとは言われてないな?」
そう気付いて、途端、不安になってきた。
もしかして、遊ばれてたりするのだろうか。
(羽倉くん、実は軽い奴だったり……?)
……やっぱりまだ、すぐには答えは出なさそうだ。
そして、私はのぼせてしまう前にお風呂から上がった。