ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
部屋に戻り充電していたスマホを手に取って驚く。
「えっ!?」
羽倉くんから着信の通知。
焦って確認すると30分くらい前だ。
(どうしよう……)
先ほどの羽倉くんの顔と台詞が甦り、なかなか通話ボタンを押すことが出来ない。
でも結局無視することも出来なくて、私は思い切ってスマホをタップした。
ドキドキしながら呼び出し音を聞いていると、ぷつとその音が止んだ。
『――りっか?』
「ご、ごめん、お風呂入ってて……」
なるべく平静を装って言う。
『ううん、今もう平気?』
「うん」
『りっかの歌、早く聴きたくて』
「!」
(――そ、そっか、子守唄!)
すっかり忘れていた。
『歌って?』
「う、うん」
そうして、私はいつもの子守唄を歌い始めた。
少しして小さく「……眠れた?」と訊くと返事がなくて。
「おやすみ、羽倉くん」
そして私は通話を切った。
「はぁ~~」
思わず大きなため息を吐きながらベッドに倒れ込む。
(……明日、顔を合わせるの緊張するなぁ)