ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
5曲目「歌」
ニ時間目が終わり、私は席を立った。
男友達数人と談笑している妹尾くんに、思い切って声をかける。
「妹尾くん、ちょっといい?」
「え? なになに、りっかちゃん」
妹尾くんは嬉しそうに私の元へ来てくれた。
でも友人たちの興味津々の視線が気になり、私は小さな声で続ける。
「その、昼休みはやっぱりちょっと……今はダメかな?」
昼休みは羽倉くんとの約束がある。
だから、その前にと思ったのだ。
「あ~、うん、いいよ」
「ありがとう」
妹尾くんはちょっと考えた後、頷いて廊下へと向かった。
廊下で話すのかと思ったけれど、彼はどんどん廊下を進んでいく。
そして辿り着いた先は。
「ここって……」
「うちの部室~」
妹尾くんはその教室の鍵を開け、ガラリとドアを開けた。
中には楽器や機材が色々と置いてあって私は目を見開く。
「妹尾くんて、軽音部なんだっけ」
「知らなかった?」
「う、うん……」
「そっかそっか~。りっかちゃん放課後はすぐに帰っちゃうもんね~」
言いながら彼はスタスタと中に入っていき、慣れた様子で立てかけてあったエレキギターを肩にかけた。
「これが俺の相棒ね」
(へぇ~さすが、似合ってるなぁ)