ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「そんなことない! すごく、嬉しい……」
『え……』
(なんだ……羽倉くん、ちゃんと私のこと……っ)
嬉し過ぎて、なんだか涙まで溢れてきた。
私はゆっくりと続ける。
「もっと、ちゃんと聞きたい」
『え?』
「電話じゃなくて、羽倉くんと会って顔見て、ちゃんと聞きたい」
『――っ』
「私も、ちゃんと返事するから」
『……』
そこで羽倉くんは黙ってしまった。
「羽倉くん?」
『……いや、りっかを前にすると上手く言えるかどうか、自信なくて』
「え?」
その少したどたどしい声を聞いて、私はハっとする。
(も、もしかして羽倉くん、今照れてる!?)
胸がキューンと甘い音を立てる。
(見たい! 羽倉くんの照れた顔、すごく見たいんですけど……!)
『子守唄』
「え?」
『歌って、りっか』
急に、いつもと同じ台詞を言われて、でもそれも照れ隠しだとわかってしまって。
「うん……!」
私は笑顔で頷いた。
――そして。
「おやすみ、羽倉くん。……また明日ね」
通話を切って、ベッドに倒れ込む。
(どうしよう、こんなに嬉しいなんて……私、羽倉くんのこと、こんなに好きになってたんだ)
幸せを噛みしめて私は目を閉じた。
(早く、明日にならないかなぁ)
――でも、このときの私はまだ気付いていなかった。
これから、羽倉くんの甘すぎる溺愛ぶりに翻弄される日々が始まることに……!