ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

 気になって、恐る恐る顔を上げたときだ。

「……りっか」
「え?」
「キスしていい?」
「へ!?」

 思わず声がひっくり返ってしまった。
 羽倉くんがメガネを外して、またどきっと胸が鳴る。
 再び両肩を優しく掴まれて。

「――ちょ、ちょっと待って、羽倉くん……!」
「なんで」

 少し不服そうな声。

「ま、まだ、その、心の準備が出来てないっていうか……」
「俺はもう待てない」

 そして、彼のひたすらに良い顔が迫ってくる。

(ひえぇぇぇ~~!?)

 心臓が爆発してしまいそうで、私はぎゅっと目を閉じた。
 そのとき。

 キーンコーンカーンコーン

 予鈴が鳴った。
 助かった、と私は慌てて言う。

「ほ、ほら、もう行かなきゃ羽倉く……んっ!」

 その口を塞がれて、私は大きく目を見開く。

 ――ちゅ、と小さな音を立てて彼の唇はすぐに離れた。

「~~っ」

 目を閉じれば良かったとか今更思いながら、ゆっくりと彼を見上げて私は驚く。

 彼が、嬉しそうに微笑んでいた。

 その優しい笑みに思わず見惚れていると、彼は私の頬にそっと触れた。
 そして、もう一度唇が重なる。

 今度はちゃんと目を閉じて、私たちは少し長めのキスをした。

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