ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「お前なんかがな、あのKanataと同じ身長ってのがムカツクんだよ!」
「……は?」
(……は?)
羽倉くんの声と私の心の声が綺麗にハモった。
「は? じゃねーし! お前、まさかKanata知らねーのかよ!?」
イライラとした様子で妹尾くんはポケットからスマホを取り出し、羽倉くんにその画面を見せつける。
「この人だよ! 超人気モデルのKanata!」
ここからではその画面は見えないけれど、妹尾くんは今なんの操作もしなかった。
ということは、ロック画面をKanataにしているということで。
「……」
羽倉くんは、多分どういう顔をしていいかわからないのだろう、完全なる無表情でその画面を見ている。
「なんだよ、その間抜け面はよ! 見ろよ、ビジュ優勝過ぎんだろ! この人とお前がな、腹立つことに同じ身長なんだよ! 別に羨ましいなんて思ってねぇからな! お前もな、折角そんなデカいんだからもっとこう、しっかりしろよ! 見てるとイライラすんだよ!!」
「……」
一気に怒鳴って少し疲れた様子の妹尾くんは最後びしっと彼を指差した。
「とにかくだ。ボーカルの件、りっかちゃんともう一度ちゃんと話せよ。わかったな!!」
そうして彼は柄悪く、その場を去っていった。