ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「……りっか」
「!?」
両手で口を覆い必死に笑うのを堪えていた私はギクリとする。
「そこにいるんでしょ」
「……ば、バレてた?」
私は物陰からひょこっと顔を出し、彼の元へと駆け寄る。
「なんというか……まさかの、だったね」
(まさか、妹尾くんがKanataのファンだったなんて……)
意外過ぎて、ちょっと複雑で苦笑していると、ふわりと抱きしめられて驚く。
「は、羽倉くん!?」
「……」
でも彼はすぐに解放してくれた。
「お迎え、大丈夫?」
「あ、うん、これから急いで行く。夜、また電話するね!」
そうして私は手を振り駆け足でその場を離れた。
羽倉くんが、その後ひとり重い溜息を吐いたことなんて知らずに……。