ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「今日はどんなお仕事だったの?」
「雑誌の撮影」
「へぇ~、やっぱ凄いなぁ。将来はこのままモデルの道に進むの?」
「どうだろう。仕事がもらえる限りは続けたいと思ってるけど」
「そっかぁ。妹尾くんみたいに男の子のファンもいるんだし、きっとこれからもどんどんお仕事入ってきそう!」
「りっかは?」
「え?」
「将来のこと」
「あぁ。……私は、高校卒業したらどこかに就職出来ればいいなぁって」
「そう」
話しながら改めて思い知る。
(なんか、やっぱ全然違うなぁ、私たち)
と、そこで自宅アパートが見えてきた。
「うち、そこのアパートだから、ここまでで大丈夫。本当にありがとう!」
「ボーカルの話」
「え?」
手を離そうとして、引き留められて驚く。
彼はなんだか思いつめたような表情をしていて。
(羽倉くん……?)
「もう、嫌だなんて言わないから」
「え……?」
「りっかなら、あいつの言う通り人気出ると思うし。……りっかが歌いたかったら、もう止めないから」
そうたどたどしく告げられて、私は目を見開く。
(もしかして羽倉くん、妹尾くんから言われたこと気にして……?)
胸がきゅーんとなる。
「! り、りっか?」
思わず、私は自分からそんな彼を抱きしめていた。
彼が驚くのがわかる。