ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい


(――そんで、次の日ここに呼び出されたと思ったら、膝枕しろ、子守唄を歌え、だもんなぁ……)

 それから、早一ヶ月が経ってしまった。

(にしても睫毛長いなぁ。ちゃんとすればあんなにイケメンなのに。クマはメイクで消してるのかな?)

 その綺麗に整った顔をここぞとばかりに見つめる。

(羽倉くんがあのKanataだって知ったら皆きっとびっくりするだろうなぁ)

 彼はその普段の外見からクラスの皆から超陰キャ扱いされているから尚更だ。

(……やっぱり、わざと陰キャっぽく見せてるのかな)

 だとしたら少し勿体ない気がした。

(まぁ、この高校バイト禁止だし、モデルなんてやってることバレたら即退学だろうから仕方ないけど。こっちもバレたら困るし……だからこんなお世話係みたいなことしてるんだけどさ)

 もう一度、彼の目の下の酷いクマを見下ろす。
 どうやら彼は『不眠症』らしく、でも私の子守唄があると不思議と眠れるみたいだ。

(……悪い気はしないけど、いつまでこんなこと続けるんだろう)
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