ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

「なら、いいんだけどさ……や、良くはねーけど」
「?」

 首を傾げる。
 なんだかバツが悪そうな顔で彼は続けた。

「いや、俺のせいだったらと思って」

(あぁ、そっか)

 昨日の放課後のことを思い出した。
 彼は、羽倉くんが自分のせいで学校を休んだのではと考えたのだろう。
 私は笑顔で首を振る。

「妹尾くんは関係ないと思うよ。ほんと、ただちょっと体調崩しちゃったみたいだから」

 すると妹尾くんは安堵したようだった。

「そっか。じゃあ、まぁ、お大事にって伝えといて」
「うん、わかった!」

 少し恥ずかしそうに去っていく妹尾くんを微笑ましく見送って、私はスマホを手に取った。
 早速妹尾くんからのメッセージを打とうとして、でもやめる。

(今は忙しいかもだし、今夜会えた時でいいよね。……会えるよね?)



「りっかねぇ?」
「元気ない?」
「え?」

 保育園からの帰り道、手をつないだ弦樹と絃葉が心配そうにこちらを見上げていて慌てる。
 顔に出てしまっていただろうか。

「そんなことないよ」
「もしかして、りっかねぇフラれちゃった?」
「え……」

 絃葉に言われてどきりとする。
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